ネバーランド

 

 

 何だろうか。知らない人の、知らない記憶を見たような気がした。それも複数。それも、順番と時代はてんでばらばら。

 知らない誰かが母親を亡くす記憶。知らない誰かが腕を切られる記憶。知らない誰かが女を犯す記憶。知らない誰かが母親を殺す記憶。知らない誰かが全滅した村を見やる記憶。知らない誰かが『塔』で笑う記憶。知らない誰かが神に忠誠を誓う記憶。知らない誰かが―――

 ともかく、いい記憶は残っていない。全てが全て、悲痛と哀しみとタールのような絶望を胸にしていたり、どこか奇妙な、吐き気がする快楽で酔い痴れていたりする。何か歪んだ、まともじゃない記憶。

 それらの叩き込まれたものたちに、彼女は小さく悪態をついた。

「・・・・・いやな夢」

 そう。夢。彼女にとってその記憶達の認識は「夢」。そうでなければ壊れてしまう。主観で見せ付けられたそれらの出来事は、彼女にとって客観的なこととして受け取らないと、かなり辛い。

 そのせいか、彼女が記憶の夢から覚醒した時、吐き気がこみ上げてくるのが分かった。何せ、まともじゃない感情の渦をありとあらゆる場合で叩きつけられたようなものなのだ。正気に戻ればあれほど残酷で気分が悪い夢はない。

「・・・・・・・・ぉえ」

 ベッドから出て、洗面器を探す。洗面器じゃなくてもいいから、何か吐いても大丈夫そうなところ。ええいもう、トイレか何かないのかこのペンションは――

「・・・・・・は?」

 ここで、やっと彼女は正気に戻った。

 ――ペンション?そんなところ、来たことない。

 けれど彼女がペンションと思うのは仕方ない。実際、木の柱と漆喰の壁で作られた質素な一室は、彼女が知る限りペンションのような造りだった。木造のベッドにマットレスは布団を敷いただけ。上に明りはなく、やはり木造の小さな椅子にはランプが置いてある。この一室にはその二つの家具しかない。けれど明りがなくても明るいと言うことは、今は昼か朝。――気泡があるガラスで造られた、ちょっとアンティークな形の窓の光りはなんだかとても眩しそうなので、多分昼。

 ではここは何処か。そして、なんで自分はこんなところで寝ていたのか。なんで、自分は眠っていたのか。

「・・・・・あー?」

 ゆっくりと、夢より前の記憶を思い出してみる。そう、何かに追われていて、気分が高揚してきて、広い野原に出たのだ。そこで何かを待っていたが、その時になっても、何かは来なかった。だからやけくそになって叫んだ。

『糞親父』

「・・・・・・・・・・・」

 はて。それからの記憶がない。何か、大きな音を聞いたのか、それとも何か眩しすぎるものを見たのか、頭ががんがんと痛み視界が変に定まらない他は、至って体は動く。いや、そうではなかった。

「・・・・・・む」

 唸った彼女は、背伸びをして気が付いた。何だか体が妙に疼く。そういう気分ではないはずなのに、アドレナリンが過剰に分泌しているような感覚。そんな気分の高揚は、母親が亡くなってからは全くなかったのに、なんだか彼女は今とても元気なのだ。――無理やり、何かの力で元気にされたような感じもしないでもないが。

 さて。部屋は見回り――と言っても、見回れるほど大きな部屋ではない。三畳半ぐらいのこぢんまりとした部屋だ。――、自分の体の健康状態は何となく分かった。視界も頭痛も少しずつ治まり、動くことには支障はない。さて、どうしようか。

「あ・・・・・」

 と、部屋の出入り口――何だか知らないがこの部屋はドアがない――から、女の子が顔を出した。ふわふわの綿毛のような金髪に、少ない髪を赤いぼんぼりのついた髪紐でツインテールにしている。優しげな目元に、少し奇妙なガウンのようなものを着ている。全体的に華奢な体つきで、食が細そうだ。

 外国の子どもかと思って少し驚いたが、それでも少女の手元の使い古された洗面器とタオルを見れば何となく何をしていたのか分かる。

 言葉が通じない可能性を考慮しながらも、彼女はなるべく優しい顔を少女に向けた。

「おはよう。それともこんにちはかな。あなたが助けてくれたの?」

 どうやら言葉は通じるようだ。こくん、と控えめに頷いた。

「ありがとう。もう気分はいいから、そんなことはしなくていいわ」

 彼女の言葉に、少女は不思議そうな顔をする。

 実際、そんなことを言った彼女自身も自分が何か変なことを言ったような気がした。――なんとなく、そう、なんとなく、気持ちに余裕が出来ているのだ。高揚感のせいかもしれないが、彼女は今、とても優しい気持ちになっている。母が死んだ時から、そんな気持ちは忘れていたはずなのに。

 自分は案外単純なのかもしれない。最愛の母が死んでたったの数ヶ月というのに、その感覚を忘れている。じっと見据えてきた心の傷は、なんだかもう治ってしまっているのではないか?

「・・・・・お姉さん、いい人なの?」

 急に、少女がそんなことを言ってきた。

「は?」

 無論、彼女はそう返すしかない。

 その反応を見て、少女はどう思ったのか、勇気を持ってと言わんばかりに、一気に捲し上げた。

「わたし聞いたもん。魔族はものすごく凶暴だったり、もの凄く恐かったりするって。そういうのがいなくても、人間とはもともと仲が悪かったから、今の人間と魔族はあんまり戦わないけど、仲はよくないって。けどお姉さんは人間と仲良しの魔族なの?」

「はぁ?」

 金髪の少女は、いかにも必死そうに彼女を見る。見られた彼女は、今まで少女から出てきた言葉を反すうするのに精一杯だった。

 マゾク。凶暴。人間。対立。戦い。仲良し。

 どうも何かが物騒らしい、ということは分かる。しかし――

「・・・・・・・・えーと、今なんて?」

 どうも自分の聞いた言葉の意味を把握していない彼女は、顔が引きつっているのを重々承知で目の前の少女に尋ねた。

 それを見て、少女はきょとんとする。次に、訝しげな顔になった。

「・・・・・お姉さん、魔族じゃないの?」

「マゾクって何?」

 一番知りたいことを訊ねてくれた少女に、それこそ反射的に質問し返す。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 二人の間に沈黙が横たわった。

 少女の方は唖然としている。彼女の方は必死で少女を見ている。どちらも冗談抜きで、真剣そのものだった。

「・・・・なんで魔族なのに魔族を知らないの?」

「知らないものは知らないわ。て言うか、ここどこ?」

「ヘルハンプール」

 返ってきた答えらしきものに、今度は彼女が目を丸くする番だった。

 ヘルハンプール?なんだそれは?もしかして、このペンションの名前か?

「・・・・・・・・ええと、そうじゃなくて。ここの地名。建物の名前はいいわ」

「だからヘルハンプールよ。お姉さん、大人なのになんで何も知らないの?」

 大人なのに何も知らないといわれても、知らないんだから仕方がない。

 とりあえず、自分の知っている地方名を出すことにした。知っているというか、いるはずの地名だ。

「・・・・・・じゃあ待って。ここは、岐阜じゃないわよね」

「ギフ?」

 またも少女がきょとんとする。先ほどから、二人の会話はすれ違い続けている。名詞一つ二つでこれほどまで会話が進まないのだ。人間は案外不便なものらしい。

「じゃあここはどこ?日本国内?それともアジア?ヨーロッパ?アメリカ大陸?ロシアじゃないわよねこんな温かいんだから。けど南半球はこれよりもっと暑いだろうし…」

 その全ての名前に少女は感じるものがなかったらしい。きょとんとしたまま首を横に振る。その顔に嘘偽りは感じられない。実はこれが全部芝居だとしたら、ハリウッドからのスカウトも夢ではない。

 苛立って髪を掻こうとした彼女が、何かに手首をかすってぎょっとした。生憎自分の耳など見れるものではないので手で耳を触ってみると、なんだか異様に伸びている。耳全体ではなく、耳の上の部分が引っ張られたように伸びている。つまり、耳が尖っていることになっているらしい。

「・・・・・・・・なんで!?

 耳を触りながら真剣な表情でそう呟く彼女をどう思ったのか、少女が素朴な口調で告げる。

「魔族だからじゃないの?」

 それを聞いて、彼女はまたも驚いた。

「耳が尖ってると魔族なの!?

 だとしたら確かに、今の自分は確実に「マゾク」だ。しかし、そういう意味ではないらしい。少女はまたも静かに首を横に振る。

「魔力が人間よりあるのが魔族よ。魔王の一族が魔族だもん。人間とは違うもの」

 そう当然のように言われても意味が分からない。驚愕を貼り付けたままの彼女は、自分の耳を触りながら、もう一つの異変に気が付いた。

「・・・・・・・・髪?」

 耳を触っていた手を髪にやり、一房を取ると、やはり自分の今まで知っていた自分の髪色とは全く違う。鮮やかな――それはもう鮮やかな、紅色めいた金髪だ。

 ぐらりと視界が歪むのが感じた。なんたって、さっき寝ている間にこんなに髪がど派手になっているのか。母は髪を大切に扱う人だから、自分も同じように手入れはしたが脱色や着色はしたことがない。

 染められたのか?寝ている間に。いや、それにしたってこちらが寝ている間に染めれるほど簡単な作業とは思えない。ましてや相手は子どもだ。そんな無駄な労力は払うはずがない。

 しかし、念のために聞いてみた。

「・・・・これ、あなたが勝手にしたの?」

「何を?」

「・・・・髪、染めたりなんかした?」

 彼女は首を横に振る。至って素直そうな反応である。

「わたしが見つけたときに、その髪の色だったからわかったのよ。そうでなきゃ、今ごろお姉さんはモンスターに食べられてたかもしれないわ。魔力があるなら別だろうけど」

 それを聞いて、彼女は口元がまたも引きつるのがよく分かった。言ってしまえば、笑うしかないのだ。

 自分が気を失ってる間に何が起こったのか知らないが、少女の言葉から出た――マゾクにマリョクにマオウにモンスターとくれば、何となく想像するものがある。つまるところ、ファンタジーの王道である「魔族」である。あの、エルフとかゴーレムとかドワーフとか妖精とか喋る動物とか、伝説のなんたらとか、そう言ったものの類と同じ、魔族。

「・・・・・・・・まじ?」

 彼女がそんなに驚いていることに、少女はどう思ったのか。きょとんとして彼女を覗き見るが、彼女の方はそうは冷静でいられない。真っ青になりながらもゆっくりと、口を開いた。

「・・・・・・ええと、それは、えーとなに」

 口元が微妙に引きつっている。眩暈がする。頭の中がそんなまさかと笑い続けている。手が振るえ、足が振るえ、全身がその事実を拒絶している。

「・・・・魔王とか、いるの?」

「さっきのわたしの話、聞いた?」

 呆れた顔で少女は彼女を見る。当然だ。さっき自分の言ったことを理解もせず、軽く流したくせに今更そんなことを訊ねる。少女のような子どもでも知っていることを、なんでこの大人の女性は理解しないのか。否、しようとしないのか。それが分からなかった。

「・・・・・いるの?本当に?」

 しかし、彼女は真剣だ。間違っても真剣そうな顔には見えないが、それでも顔色が悪すぎるので真剣だということがよく分かる。

 それに、少女は頷いた。

「いるわ。魔界って呼ばれるネウガードっていうところにお城に、魔王が住んでるって聞いたわ」

「・・・・・・・・・・・」

 それを断言された彼女の顔は、紙より白くなっていた。

 またも倒れてしまいそうな雰囲気に少女ははらはらしたが、彼女は倒れるどころではない。倒れる暇もない。それほど脳味噌は動き続け、――けれど実のあることを考えていたわけではない。その事実を否定するか肯定するかで下らない議論を脳内で永遠と繰り広げていただけだ――そしてやっと彼女が大きく息を吐いたとき、その目は確実な諦めが浮かんでいた。

 どうやら議論の余地がないというか、考える要素が少ないからその問題は放棄したらしい。それとも、もう考えることすら面倒になった――思考の放棄と取ってもいい。

「そう。それで、他に何かない?質問なりなんなり」

 むしろ先ほどまで質問していたのは彼女なのだ。そこまで偉そうな――ただ脱力していただけだが――態度を取られていてもあまりいい気持ちはしなかったので、少女は拗ねたような目を彼女に向けた。

「特にないわ。わたしの話をまともに聞こうとしなかったくせに――わたしからの質問も聞いてなかったでしょ」

 脱力しきった彼女はちょっと眉をしかめて何を質問されていたかを思い出すと、あっさりと言った。

「わたしはいい人でも悪い人でもないわ。ただただ普通の人。それに魔族だなんて知らないし、それこそ今知ったの。だから魔族じゃない。これだけは事実よ」

 あまりの態度の豹変ぶりに少女は呆気に取られたが、少女は頭が悪いわけではない。ちょっと考えて、それから思ったことを口にした。

「・・・・・・・・・・変よ。じゃあなんで、耳が尖ってるの?」

「わたしもそこは知りたいわね。気を失って起きた瞬間に耳が尖って髪の色が変わってるなんて、悪戯か冗談にしても何の意味もないし」

「・・・・・・それに、今知ったばっかりなはずないわ。だったらお姉さんは、もっと、小さいはずよ?」

「・・・・・・・・」

 ふむ、と。彼女は考えた。

 まさか自分がこことは違う世界から来ましたなんて、その話でさえ本当かどうか分からないようなことを言ったところで、この少女がそれを信じるはずがない。否、信じたとしてもなんで、どうしてと言った質問が来るはずだ。そんなこと、自分のほうが知りたいのに。

「・・・・・けど、わたしが魔族だって言う証が耳が尖ってるだけだったら、他にも色々いるんじゃないの?ここにはエルフとかドワーフとか妖精とかいるんじゃないの?」

 急に現実を把握しだした彼女に、少女は驚いた。地名ですら知らないし、魔族ですらよく分かっていなかった大人の女性が、なんでそんなことを知っているのか。

「いるけど・・・・エルフはあんまりこっちでは見ないもの。エルフは自然がないと生きていけないから、トライアイランドからはあんまり出ないって聞いたの。それに、ドワーフは話を聞いただけだけど、まったく体つきは違うわ。それに、もっと南のほうに住んでるもん。妖精は、・・・・・お姉さんには関係ないと思うけど」

 へえ、と気のない一声。

 先ほどと何かが違う。目に見えて混乱し、事実を知りもしなかった彼女が急にやんわりと自分の言葉を流す事態に、むしろ少女の方が混乱した。

「それでここは・・・・・、ヘルハンプールだっけ。王様か偉い人には会えないの?」

 急にまたも意味不明なことを言い出す。本気で、彼女の頭がどうなっているのか無気味になってきた少女だった。

「・・・・・会えないわ。わたし、貧民階級の下のほうだし、会えるのは貴族とか、戦争で立派に戦った人たちだけよ」

「ああ、あるんだ戦争」

 やはり間の抜けた言葉が入る。唸り声をあげてこの女性と話すのを止めたかった少女だが、ぐっと我慢して頷いた。

「・・・・・・あったの。もう三十年ぐらい前らしいけど」

「そう。それで、英雄とか勇者とか、やっぱりいたの?」

「いたらしいけど・・・・・そんなこと知って、どうするの?」

「困った人を助けるのが勇者なら、今のわたしを助けるのも勇者の役目でしょ」

 かなり強引な解釈である。何より、憮然とした表情のままでそんなことを言い出した彼女に、それこそ少女は固まった。大英雄が、このよく分からない女性の助けに、なぜならねばならないのか。

「んー?けど戦争って国と国とが争うわけよね。魔王に虐げられてる人間たちが勇者を作って、魔王倒せば戦争にならないんじゃないの?」

「詳しくないけど、…それから、大魔王の娘がまた戦争を起こしたの」

 そこで、彼女の呼吸が止まった。

 それに気付かず、少女はいつかの話し好きな老婆の言葉を引っ張り出してくる。

「それで、世界中が大魔王の娘に負けちゃだめだって言って戦争の準備をして、勇者さまがいた国は特に頑張ったの。けど勝てなかったよ。ルネージュの女王さまには」

 少女の言葉は何かを思い出させる。

 何か、壮絶で、けれど細部に至るまでが完璧に設定された戦記。そこに記されていた大戦の始まりは、まず勇者が大魔王を倒したことから始まる。そしてそう、倒された大魔王に、娘がいたのだ。炎の魔法を使う、激情的な娘が――。

「女王さまはたくさんの国とたくさんの君主を仲間にしていったの。その中に大魔王の娘も入って、結局女王さまが戦争を納めたのよ」

 そう、物語の中で、女の子は女王にされてしまっていた。魔族の――実は魔王の息子である青年に脅されて、国王になって戦争に参加しないと、世界を統一しないと、元の世界には帰さないと言われたのだ。

 そして女の子は世界を統一する。そのうち、大魔王の娘とも和解するのだ。だんだんと仲間や頼れる同盟者を増やしながら、女の子は国と共に、次第に成長していったのだ。争いのない、人魔の差別などない、人々が平和に暮らせる世界を願って――

 そして帰るのだ。めでたしめでたしと、ありきたりな言葉で締められたその壮大な、自分と母しか知らない物語は、戦争の終結と女の子の変化、そしてかの大陸への希望を胸に幕を閉じるのだ。

 その話は母しか知らない。その話は自分しか知らない。誰にも言ってはいけないと言われた。なんでこんなに面白いのに言ってはいけないんだろうと何度も思ったことはある。これで作家になってもいいんじゃないかと、母親に真剣に話しかけたこともある。

 けれど母は笑って首を横に振った。この物語は自分だけに知っていてほしいからと、抱いてくれた。

 まだ納得できない自分に、母は笑ったのだ。

 あの世界の出来事は、決して誰かに言っていいものではないから。――汚すものではないから。

 そう聞いたのを思い出したとき、父との二人だけの思い出になんだなと思った。だから、改めて言わないでおこうと納得したのだ。

 何度も何度も読んだ、手垢と日焼けで茶色っぽくなってしまったそのノートを読みながら。

 母が仕事で遅いとき、寂しい時は押入れの中から引っ張り出したそれを読みながら。

「ネバーランド大戦って。言うんだって」

 大学ノートの表紙には、マーカーで書いた、物語で唯一の固有名詞が踊っていた。

 ネバーランド大戦。

 母の柔らかくきれいな文字をくっきりと頭の中に浮かべながら、口の中でその言葉を呟く。

「ネバーランド…」

 何故だろう。あのいつも笑っていた母の顔を思い出しながら、その衝撃を頭の中で言葉にする。

 今自分は、あの物語の世界にいるのか?と。

 

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